6、2つの思い。

「あのね・・・私と、幸子ね、今、好きな人が同じ人なの。それで、二人に協力してもらおうなんて思えなくて、黙っていようと思ったんだけど・・・その相手は言わなきゃと思ってたの」

 明日香ちゃんは、真剣な顔をして続ける。

「その人って、2組にいるの。」

―ドキン!

 私の中で、ビックリした。まさか・・・ね。2人も高野くんを好きだなんて思えないし。。

「今、そこの廊下で話してる人なの。」

と、言って、明日香ちゃんが言う場所を見ると、高野くんと清水くんがいた。

「清水隆之。その人なの。」

 小さな声で言う。

清水くん・・・確か、1年の時、明日香ちゃんと一緒に美化委員してたっけ。それで、うちの学年で一番背が高くて、バレーボール部で、すごい活躍をしてる人だ。

「だからヨロシクね。幸子は、見てるだけでも良いって言ってるけど、私は、見てるだけなんて嫌だから。」

と、言って、明日香ちゃんは、歩き出す。そして、清水くんに声を掛けた。

 すると、高野くんと話していた、清水くんは明日香ちゃんとの話しをしてて・・・身を引いた高野くんが私の方に来る。

「椎名、そんなとこで何やってるの?」
「な・・なんでもないっ!!」
「もう教科書とか忘れるなよな」

コツン

 高野くんが私の頭を軽く、小突く。しゅわしゅわと熱くなるホッペ。ドキドキが止まらない心臓。

 だけど、嫌な視線を感じた。

洋子さんが私を睨んでいた。私は、一瞬にして凍りついた。

「未来。洋子が睨んでるよ。逃げよ。」

 さっちゃんは、知らないうちに明日香ちゃんの隣にいた。私の近くにいたのは若葉ちゃんだけ。若葉ちゃんが私の袖を引っ張る。

「う・・うん。」

怖い。

 何か嫌な予感がする。

小さな休み時間。廊下で話す生徒の声が大きく響いてるのに、私の耳には、届かないくらいに、恐怖感が私を覆った。

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