9、傍観者・幸子

 次の日、体力テストだった。昨日の雨のせいでグランドは、ぬかるんでいたのに、延期になることもなく、1日中テスト漬け。だけど、明日香ちゃんは休んだ。若葉ちゃんは陸上部だから、計測係になっていたから、さっちゃんと二人でまわることになった。

「昨日、どうだった?」

 少し不思議そうに私に問い掛けたさっちゃん。

「明日香ちゃんも来なかったんだよね。でも、若葉ちゃんと二人で行ってきちゃったよ。」
「そっか。」
「あっ・・・!」

 私は、思わず声を出してしまった。体育館にいた私達の前で、清水くんと高野くんが、反復横跳びの計測の列に並んでいた。

「さっちゃん、反復のトコにいるね。並ぶ?」
「いや・・いいよ。見てるだけでいい。」

 清水くんは背が高いから目立つ。高野くんが目立たないわけじゃないけど・・・

「さっちゃん、どこかに並ばないと計測、全部終わらないよ?」
「うん・・。」
「さっちゃん?」

 ずっと清水くんを見ていた、さっちゃん。そんなに切なそうに見つめて・・・私は苦しかった。そぉっとしておいてあげようと思った。

 その時・・・!

ドンッ!

「きゃ・・・!」
「み・・未来???」

 後ろから、押されて、コケてしまう。すぐ、振りかえると洋子さんと、その取り巻きが立っていた。

「椎名さん、そんなとこで、ぼぉーっとされてたら通行の邪魔よ!」
「・・・。」
「ちょっと待ってよ。そんなに混んでるわけじゃないのに、未来だけ押すのやめなよ!」
「牧村さん、あなたも邪魔よ! 引っ込んでなさいよ!!!」

 怖い・・・、なんで? どうして?

「未来、行こう!」

 全然違う計測の場へ移った。苦しかった。でも、この場所から、洋子さんの様子が見えた。反復横跳びを終えた高野くんに話しかけていた。私だって、好きなのに・・・なのに・・・。

 さっちゃんも、やっぱり切なそうに清水くんを見ていた。ごめんね・・・私のせいだね。。

 それから、体育館の計測を終えて、グランドの計測後、身長、体重の計測をした。

 身長150cm 体重45kg これって、やっぱ重いのかなぁ・・・。憂鬱。でも、洋子さんよりは軽いよね・・・洋子さんは、太めだ。でも、だからって何か変わるわけじゃない。

 高野くんを好きなのは、私も洋子さんも同じなんだよね・・・

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