11、こころの痛み

 中間テストが、やって来た。全然、楽しくない。部活動も一週間前から中止だし、もちろん図書室も臨時休館。

「未来、勉強してる?」

 お母さんが私を見に来た。私は、図書室で借りた「こころ」を読んでいた。

「今、授業でやってるの?」
「ううん、やってない。」
「勉強しなさい、でないと、皆に置いて行かれちゃうわよ。」
「はぁい。」

 それでも私は、引き込まれていた。そして、怖い考えが出来ていた。
「わたし」と友人Kが同じ女性を好きになって、「わたし」が、そのお嬢さんをお嫁さんに出来ることになって・・・それを知ったKが自殺してしまう。
 明日香ちゃんや、さっちゃんの思いが過った。

 もしも、清水くんが、二人のうち、どちらかを選んだら・・・残されたどちらかは、どうなるんだろう・・・。
 私も、もし、洋子さんに高野くんと両思いになられたら、どうなっちゃうんだろう・・・。

 恋愛は悲しい。
まだ私は一人・・高野くんしか好きになってないから、予測の出来ない苦しみを考えがたいものだった。

「ふぅーっ・・・」

 次の日、私は大きな溜息をついた。
「どうしたの?未来。」
「あ・・・若葉ちゃん。」
「『あ・・・若葉ちゃん。』って、随分前から、いるんだけど。」
「ごめんごめん。」
「テスト勉強進んでる?」
「あんまし・・・(汗)。」
「あんたねー、さ来年は受験生よ?うちら。」
「うん・・・。」

 受験。
高野くんは、頭いいから、きっと、偏差値の高いとこに行きそう。私は、平凡だからなー。一緒のトコなんて望めないよな・・・。

「椎名さん、ちょっと。」

 呼び出されたんだ、洋子さんに。そうして、洋子さんの取り巻きに腕を両側で掴まれ、廊下に出された。

「あの・・・何ですか?」
「目障りなんだけど。」
「へ?」
「同い年に敬語つかって、いやらしいんだけど?分かる?」
「あ・・あの?」
「そうやって、ぶりっ子してると、あとで、怖いんだから覚えておきなよ!!」

 そう言い捨てると、立ち去ってく、洋子さんと、その取り巻き。

「未来、あんた・・大丈夫だった?」

 呆然としてる私の頬に触れた若葉ちゃん。訳がわからなかった・・・。でも、確実に目をつけられたことは確かだった。

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