14、洋子と高士。

「ワザとぶつかったんでしょ?」
「そ・・そんなワザとなんて・・・」
 洋子さんが私に詰め寄る。私は、後退していく。

「椎名!」

「高士。」

!?

 え? 今・・・高士って呼んだ。

「長谷部、寄せよ。椎名だってワザとじゃないって言ってるんだ。」
「わ・・分かったわよ。高士に免じて今日は許すわ。」

 そう言って、サッサと逃げていくように帰っていった洋子さん。

「でも・・どうして? どうして、洋子さんは藤木くんを高士って呼ぶの?」
「俺・・小学生の時、長谷部から告白されて、振ったんだ。それで、喧嘩友達みたく仲良くしてた角田が、俺の好きな人だって勘違いされて、長谷部は角田をいじめた。」
「え・・。」
「だから・・俺は、角田を助けてやる事が出来なかった。助けたら、また、いじめられちまうから。」
「・・・。」
「でも、今度は守ってやりたいんだ。椎名を。」
「藤木くん・・。」

 頭の中がパニックだった。洋子さんが若葉ちゃんをいじめてたこと、洋子さんが藤木くんを好きだったってこと、藤木くんが私を守りたいこと。

 全部、小さなことで繋がってる。

 もしかしたら、私は若葉ちゃんと出会ったのは運命なのかもしれない。

 次の日、私は若葉ちゃんに手紙を書いた。昨日のこと、全部、真実かどうか・・・答えてくれないかもしれないけど。

 放課後。図書室で。

「そうだよ。私、洋子にいじめられてたの。」
「若葉ちゃん・・」
「でも、終わったこと。私が、藤木と仲良くしてたから勘違いされたみたいでね。」
「うん・・」
「だから、未来が心配なんだよ、藤木は。分かる?」
「でも私・・・守りたいなんて言われたの初めてで。高野くんがいるのに・・好きなのに。」
「藤木に甘えればいいよ。」
「でも・・」
「あいつは私を救ってくれなかった。でも、もし、今回、未来も救えなかったら私は、あいつを恨む。」
「若葉ちゃん・・・」

 どうしたらいいんだろう。

守ってくれるなら高野くんがいいなんて思ってしまう。だけど・・高野くんは何も知らない。

 図書室を締めて、鍵を持って職員室に行く。職員室の窓から、高野くんが洋子さんと話してる姿が見えた。

 胸の奥が、グッと締めつけられてるようで、苦しかった。

「未来。」

 若葉ちゃんが震える私の肩を叩いた。私は、私は・・・これから、どうなっていくんだろう。

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