25、運動会の思い。

 そして、とうとう運動会が始まった。私は、ずっと専念してた。まるで何も考えないかのように受付の仕事をこなして、2年女子のダンスを終えて戻ると、お湯が足りないとのことで給湯室に走った。

 すると、その途中で・・・

思いがけないことに高野くんが目の前から来たんだ。

 そのまま、何も話さずに、目も合わさずに通りすぎようとした高野くんに。

「高野くんっ!」

 私は大きな声を出した。

「なに?」
「私・・私。」

 バカバカ。何を言おうとしたんだ私、呼びとめちゃって・・・。

「私、負けないから。洋子さんのイジメに負けないから、だから・・・」

 でも。

「藤木と付き合ってるんだって? よかったな。じゃあ」
「ち・・ちがうっ!!」

 そんな私の声にも動じないで、高野くんはそのまま1歩いっぽ歩き出した。

 チガウのに・・私は、あなたが好きなだけなのよ。。

 もう、どうすることもできないのかな・・・


 大縄跳びも本番でも怖かった。クラス対抗リレー、私は足が遅いからって、早めになってた。

 藤木くんが30番で走ってた。2組の30番が高野くんだったんだ。

 二人とも、お互いを意識しながら走ってた。どうして?

 私は、苦しかった。

結局、藤木くんが勝ったんだけど・・・

 でも総合的には3組が優勝した。

そして、片付け。

 図書委員は、受け付け場所など片付けてた。野球部は、テントを片付けてた。

「椎名さん!!」

 あ、藤木くんに告白したいって言ってた女のコだ。

「なに?」
「あのさぁ、藤木くんを呼んでもらえるかな?」
「・・・うん。」

 私は、躊躇わずに、藤木くんの肩を叩いて、彼女のとこに連れていった。

 二人が中庭に行ったのを見届けて、私は仕事に戻った。

「椎名。」
「しもちゃん、ごめんごめん。」
「さっきのあのコ、藤木に告白したいって言ったんでしょ?」
「え?なんで分かったの?」
「ダメだよ、椎名。そういうのって、自分が辛くなるよ。苦しい時にだれかの幸せの手伝いって。」

その時。

 さっきのコが泣き出して、校門を出ていった。

私と、しもちゃんは顔を見合わせた。

 中庭から藤木くんが出てくる。

「椎名、ちょっと。」

そう言って、彼女と話してただろう中庭に今度は私と藤木くんが来た。

「こぉのーバカやロー!!!」

 と、いきなし言われた。

「バカとは何よぉ!!」
「お前さ、素直になれ。俺は、どこにも行かないよ。もちろん、これからもお前とは友達だ。でも、人の幸せを望む前に、お前が幸せになれよな」

 そう言って、若葉ちゃんが迎えにきてくれて一緒に帰った。

「未来、あのさ・・」
「なに?」
「運動会終わったら、すぐ合唱コンクールじゃない。」
「うん。」
「その前に私の陸上の秋の大会があるんだー。」
「へぇぇ、すごいねー。」
「未来、応援にきてくれないかな?」
「あ、うん、いいよー。」
「ほんと??」
「うん^^」
「時岡も出るからさ。見てあげてね!でも惚れちゃダメだよ」
「分かってるって」

 私は、このまま、高野くんに誤解されたままになるのかな・・

 そういう気持ちとは裏腹に笑顔でいられる自分が怖くなってった。

コメント