33、スキー教室・2日目。

「うぅ〜っ 痛いっ!!!」

 魘されて目が覚めた。隣で寝てる若葉ちゃんの足が私の痛い足を蹴っ飛ばしたらしい。。

 腕時計を見ると、5時半。起床時刻は6時。早く起きてしまったみたいだ。メガネも掛けずに、そぉっと外へ出ようとする。

 すると、直子が誰かと話してるみたい。部屋の外を見ると、その姿が見えた。誰だっけ? メガネ掛ければ分かるんだろうけど・・んーー? あっ、あの髪型と背の高さ・・

 清水くんだ?

間違い無い。あの背の高さは清水くんだ。

 どうして??

 私は、直子が分からなくなってきてた。色んな人を好きって言ってて、どうして?

 朝食後、すぐに宿舎を出て、ゲレンデまでバスで行った。

 やっぱり足が痛くて、大瀬さんに

「椎名、上がってろ」

と、言われ、ロッジに戻ったら・・しもちゃんがいた。

「しもちゃん? どうしたの??」
「あははっ。俺も怪我したの。」

 そして他にも怪我した人や体調の悪い人は先に宿舎に帰ってていいと言われ、宿舎にしもちゃんや他の子も一緒に戻った。

 暗い部屋で一人きりになる。

「トントン」

「椎名、娯楽室で俺らトランプしてんだけど来いよ?」
「うん!」

と、しもちゃんに誘われ、他のクラスのコも交えて、ババ抜きをした。

「椎名ちゃんって、4組?」
「うん。」

一人の女の子が私に言う。

「鶴巻直子には気を付けなね?」
「えっ?」
「あのコの両親、離婚してるの。しかも一人っ子で、今、お母さんと暮らしてるのよ。だから、すごい男の子に執着あるみたいで、ね。」

 そーなんだ・・・。
だから、色んな人をキープみたくしたくなるのかな?

ウチは、お父さんもお母さんも、たまに喧嘩するけど仲良くしてるし・・でも、直子は、そういう光景がないんだね。。

「未来っ!」
「若葉ちゃん?」
「あんた平気なの??」
「うん、ちゃんと湿布してもらったし、なんとかね。」
「無理しないでね。」
「うん!」

 今、私は直子と比べたら幸せなのかもしれない。親もいて、兄弟もいて、大事な親友がいて、今は、いじめもなくて。

 そして、昨日と同じようにお風呂に行き、娯楽室で皆でおしゃべりをしてた。

 私がトイレに立ったら、若葉ちゃんも付き添ってくれて、近くのトイレにいく。

 出てから、歩くと・・・洋子さんが高野くんに写真を一緒に取ってと頼んでた。高野くんは何て答えたのか分からないけど、洋子さん並んで写真を取っていた。

 私は、呆然とした。カメラ持ってきてるけど・・洋子さんに先を越された感じがした。

「未来? カメラ取ってきてあげようか?」
「ううん、いい。」

 私は、切なくなった。

まるで気持ちまで無くしてしまったかのように、ショックが大きかった。もう、高野くんを好きになっても辛いだけ・・しかもスキー教室が終われば、私達は3年生になる。

 そしたら、恋愛なんかしてる場合じゃなくなるね。このまま諦めたほうが、叶えられなかった初恋として、傷つかなくてすむのかもしれない。

 空から舞い落ちる雪を見た。小さな白い羽根のように浮かんでた。

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