34、スキー教室・3日目

「未来、ちょっといい?」

 スキー教室も明日で終了という3日目。若葉ちゃんが、私を部屋の外に呼び出す。

「どうしたの?」

 私は、足を少し、ひきずりながら二人で談話室近くのホールに行く。

「未来さ、すごく言うのが辛いんだけどさ。」
「うん?」
「高野のこと、諦めたほうがいいと思う。」
「えっ?なんで?」
「高野・・あいつ、女のコの気持ち分かってない。」
「えっ?」
「今日も未来さ、宿舎に残ったじゃん? で、今日の練習の時に、私見たんだ。洋子が高野に告白してた。」
「えっ・・?」

 洋子さんが告白?

「でも、高野は振ったけど、その後言った言葉が最低だった。」
「なんて?」
「『俺は、女には興味ないんだ。ほっといてくれ。』って。」
「・・・。」
「だから、未来も、きっとそう言われるよ。私、未来が傷つくの見たくないんだ。」
「でも・・。」
「未来。」
「・・・。」

 高野くんは、頭いいから、もう受験の態勢に入ってるのかもしれない。だからと言って・・そんな興味ないなんて・・・。

 私は、頭の中が真っ白になって・・答えた。

「うん・・しばらく、私も忘れようと思う。本当に好きなのかどうか・・。」

 そう私は分からなくなってきてた。高野くんという人格が分からなくなってきてた。それが苦しいわけじゃないのに。ただ、皆と同じように好きな人がいるって言いたかったのかな・・。

「しっ・・椎名〜〜、助けてくれー!!」

 藤木くんが全力疾走で、私達の前にやって来て言った。

「鶴巻って、なんなんだよ、あいつぅ。はぁー。」「モテる男は辛いねぇ、藤木。まぁ、せいぜい頑張りな。行こう、未来。」
「あ・・うん。」
「ちょっと待ってば。お前ら。」

 そう言って、藤木くんが私の腕を掴んで離さない。

「鶴巻は、お前らのダチだろ? なんか言ってくれよー。」
「言ってもムダ、ムダ。」

 そう言って若葉ちゃんはお手上げポーズを見せる。

「確かにムダ・・だよね。」

 それでも私の腕にしがみつく藤木くん。

「藤木、いい加減、未来の腕を離しなさいよー。」
「イヤだ!助けてくれるって言うまで離さねぇ!!」

 二人が私の引っ張りあいをした。

「痛いってばぁー。」

「未来は渡さないもん、離しな!藤木ッ!」
「お前こそ離せよ、角田!!」

 その時、高野くんが、こっちに向かってやって来た。

 どくん・・どくん・・。

目が合わせられない。

「へー。藤木って、椎名の事好きなんだ?」

 そう言った。

私は、強く傷ついた。

「そうだもんなー。噂されたし、へー。」

泣きそうなくらいに辛かった。

 そう言って、高野くんは、また何処かへ消えていった。私は、その場に蹲った。

「未来?」
「わ・・私・・もう、ダメかもね・・。は・・初恋は失恋するって・・ほ・・ホントかもしれない。」

 どうして、こんなに傷つくんだろう。
あんなに好きだと思えた人なのに、どうして?

 高野くんの気持ちが分からない、高野くんをどうして好きになったかわからない。

 私は、もう人を好きになれるのか分からないくらいに、苦しかった。

 そして、次の朝・・・スキー教室、最終日。最終日に事件は起きたのだった。

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