36、しばらく「さようなら」しよう。

 また、春が近づいてきた。

3学期も今日で最後。それと同時に、若葉ちゃんや、明日香ちゃん、さっちゃんとの4人で過ごした1年も終わり。 私達が3年生になったら、また、4人揃って同じクラスになる確率は低い。だから、ずっと教室にいたい気持ちになってた。

 あれから、ずっと直子と離れてた私達。

私は・・臆病者だ。

 スキー教室以来、高野くんを避けてる。

もう、好きなんて考えていられなくなる。春休みから私も塾に通い始めることになってるからだ。

「未来ー、帰るよぉ。」

 部活のミーティングに出てた若葉ちゃんが、藤木くんや、しもちゃんを連れてお迎えに来た。

「4月から、中3かぁ・・。」
 そう、藤木くんが言う。

「椎名、3年になっても、図書委員?」
 しもちゃんが私に、そう聞く。

「うん、そうだね。でも、しもちゃんと、また同じクラスになったら取り合いになっちゃうね(苦笑)」
「ったく、未来は、また委員会に熱を出すわけ? 3年になったら部活に熱を出さないの?」
「でも、私、運動ダメだから。」

 そう話しながら、いつもの角に来る。

「椎名。」

 藤木くんが私を呼んだ。
「なに?」
「あのさ・・お前さ、高野のこと・・もういいのか?」
「・・・。」
「ちょっと藤木? また未来に思い出させるつもり?」
「いや、そういうわけじゃなくてな。もし、3年になって同じクラスになっちまったら気まずいだろうなって思ってさ。」
「私・・もういいわけじゃないけど。しばらくの間、忘れてようと思う。」
「そっか。」

 好きだった。

でも、今は空っぽで全然分からない。
好きな気持ちが分からなくなっていったんだ。

 そして、春休みになり、私は初めて塾に通い始めた。
その教室で・・

「えっ?椎名じゃん??」
「えぇ??? かずくん?」

 小学生の時、同じクラスになったことがあって、私が剣道やってた頃、野球をやっていた和之くんこと、かずくんがいたのだ。

「すっげぇ・・久し振りだなぁ。」

 そうっか。かずくんは西の中学校に行ったんだっけ。

 でも、かずくんとは仲がすごく良かったわけじゃない。
 小4の時、かずくんと噂を立てられてから、話せなくなったはずだったのに。

 この再会が、少しの私に勇気を与えてくれるとは分からなかったけど。

 塾は毎日あった。

 塾の勉強も大変だったけど、かずくんと小学校の時の想い出話とかして・・私は、高野くんのことを忘れていた。忘れてた。

 4月の始業式まで忘れてた。

本当に、しばらくの「さようなら」つもりだった。

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